今後、プライベートバンキングの世界では富裕な顧客の資産運用を対象とした「手づくり」の自社投資信託がますます増えるに違いない翻ってわが国の投資信託はどうであろうか。
個人の金融資産が1200兆円に達したと言われでも内容が問題だ。
これは証券関係者がいつも嘆くことであるが、積み重ねられた事実であるから仕方ない。
理由はいろいろあろう。
また、この差をどう読むか立場によってさまざまであろう。
少なくとも投信が個人の資産の柱になっていないことは確かだ。
証券会社や、投資信託会社は投信をもっと信頼される存在にしなければ、とてもアメリカ並みにはならない。
証券界がこれまで販売に力を入れて曲りなりにも伸びてきたのは、元本安全型のMMF(マネー・マネージメント・ファンド)や公社債投信である。
アメリカでもはじめはそうだった。
MMFは中期国債ファンドとともに投資信託の主軸になっているが、これらあわせて口座数は830万口座に成長している。
数は少ないが、支持されている投信もあるのである「持っていて良かった」と言われるような投信が必要なのだ。
日本の投信の残高は、元本ベースで97年7月で50兆円、内訳は公社債投信35兆円、株式投信15兆円でまことにつましい。
これに対してアメリカの投信残高は、340兆円である。
世界最大の投信会社フイデリティのマゼラン・ファンドは630億ドル(約7兆5000億円)もある。
あまりにも違いすぎるではないか。
日本では預貯金だけで630兆円もあるのである。
アメリカの個人金融資産は2500兆円である。
いかに投資信託が大きな位置を占めているかが分かろう。
アメリカの株式市場を支えているのは、とうとうと流れ込む投信の資金であるアメリカで起きたことは数年後には必ず日本でも起きる」と言われる。
投信だけは例外であろうか数年のうちに日本でも投信ブームが起きる」と期待する関係者は少なくない。
日本でも投信の改革を推進する動きはもちろんある。
運用、販売一体となった改革が必要であろう。
投信各社は、ビッグバンで銀行窓販や「ラップ・アカウント」の導入などで大きな販路が拡がると期待している。
フィデリティのマゼ、ラン・ファンドのような大型商品を育てたいと切実に思っている。
しかし、投資のパフォーマンスがいままでひどすぎた『フィナンシャル・タイムズ』や『ウオール・ストリート・ジャーナル』で定期的に投信の運用成績が発表になるが、年率30%、50%も上昇する素晴らしい成績のブアンドがいっぱいある(もちろん悪いものもある)。
日本の投信、特に株式投信は運用成績が軒並み低調だ。
その中で外国系の運用会社の投信は比較的良い。
成績が悪ければ売れない。
投信は売れてこそ商品になる。
窓販用に銀行へ売込みをするにしても、自信のないパフォーマンスでは外国投信には勝てない。
なぜ、外国系投信の成績が良く、日系の投信の成績が悪いのか。
理由は株式市場の低迷ばかりではないだろう。
ある外国系の運用会社の幹部は言うファンドマネージャーの質もあるが、会社の人事政策や、運用態勢が10年遅れている。
コンピューターを使ったシステムも遅れている。
一般に、日本のファンドマネージャーは株価の大きなトレンドは追えるが、小さな動きで良い成績を出す能力に欠けている。
97年の株式市場のように、小さな波動を繰り返す不安定な相場では、彼らは手も足も出ない。
外国系の運用者は給料は運用成績によって決まるし、悪ければクビになることもある。
運用では自己の運用哲学をもち、付和雷同的な人まねはしない。
いまのままではとても日本勢は外国勢に勝てない。
ビッグバンで外国系は物凄い勢いで伸びる」と断言する。
N証券では「ファンド・ネット」というコンピューター(インターネット)をフルに活用して、投信の情報提供と通信販売を推進している。
ユニバーサル証券のように「通信販売部」を強化するところもある。
さらに、一部の証券会社では販売手数料を取らない「ノーロード」投信を取り扱うところも出て来た。
手数料がない分、良い運用成績が期待でき、長く保有してもらうというものである。
しかし、どんなに販売体制を強化しでも、パフォーマンスが悪かったら売れない。
日本の証券会社も、運用成績の良い外資の運用会社の投信を積極的に販売を始めた「ラップ・アカウント」の導入を控えて品揃えの意味もあるが、系列にはこだわっていられなくなっている。
アメリカ最大の投信運用会社フィデリティは、投信販売の業務と株式ブローカー業務の認可を受付、いよいよ日本で投信の直接販売を開始する。
これまで、すでに日本では証券会社を介して自社運用の投信を販売しているが、銀行での窓販開始と、株式委託手数料自由化後のディスカウントブローカー業を念頭において、投信直接販売体制の強化に取組んだものだ。
アメリカの大手投信運用会社(投資顧問も行う)パトナム・インベストメントも日本で投信業務への本格的参入を始める。
日本ではすでに、子会社の「ザ・パトナムアドバイザリー・カンパニー・インク」東京支社が投資顧問業務を手掛けている。
巨大な日本の年金市場や投信市場を狙って、外国の顧問会社や投信会社が続々と日本市場に参入しつつある。
外国の銀行や証券会社による資産運用会社の設立も相次いでいる。
ファンドマネージャーやセールスの増強を図っている。
特にファンドマネージャーの引抜きは、既存の運用会社の脅威になっている。
アメリカでは投信の規模は日本の約7倍の大きさで、株式市場の発展と国民の財産形成に大きな役割を果たしている。
この規模、役割の違いは販売チャネルの相違に由来するという見方が強い。
アメリカでは投信販売は証券はもとより、銀行、保険、ファイナンシャルプランナー、運用会社と実に多様である。
これに対して、日本では販売は運用会社の関係証券会社主体となっているために、さまざまな弊害が起こり、これが投信の不信につながっている、と金融界は批判してきた。
投信の銀行窓販は97年12月から間借り方式でスタートした。
98年12月よりいよいよ銀行の店頭で販売される。
いったん、銀行窓販が始まり1行400〜600店もある都銀の支店網や地方銀行の100〜150庄もの支店網がフルに投信販売に携われれば、販売額は飛躍的に伸びるだろう。
その場合、成績によって売れる投信と売れない投信で大きな差がつくということだ。
投信会社の中で、新設の興銀投信、農中投信、日生投信などが業務開始して3年にして残存元本を飛躍的に伸ばしている。
97年7月にT投信投資顧問の第一弾の投信は、株式投信と公社債投信の二本建てであったが、1368億円を販売した。
投信の潜在的市場は非常に大きいのだ。
強力な販売網をもっと大手生命保険会社が本格的に窓販を開始したら、その影響は想像もできないくらい大きいだろう。
窓販開始に当たって銀行は、行員の教育に懸命だ。
確定利付の元本安全の商品しか取り扱ったことがない銀行マンが「銀行の商品は元本安全」と信じている顧客に投信を販売するのは容易なことではない。
最初は公社債投信が主流となろう。
注意しなければならないのは、資金的に余裕のある層というのは高年齢者層であるが、高齢になればなる程、資金は安定志向となるということだ。
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